モバエムのイベント「Shining Night Serenade☆」のストーリーについての感想です。
「Shining Night Serenade☆」では、JupiterとAltessimoがストリートピアノを使用した野外ライブに出演します。ライブにはピアノの伴奏者が必要で、主催は圭か北斗による伴奏を希望。かつてピアニストの夢を諦めた北斗が悩み、そして答えを出すまでが描かれます。
伊集院北斗というひとは、かつてピアニストを志す少年でした。
彼がどのようにピアノを愛し、夢に破れ、その過去に向き合ってきたのかは、雑誌通常号やSide Memories、その他イベントストーリーなどで触れられています。
北斗は直近のイベントストーリーで、ピアニストを諦めた過去について、冬馬と翔太にこう言っていました。
気にしなくて大丈夫だよ。
今はもう、昔の話なんだ。「Wedding Night」 ストーリー16
自分の中では折り合いがついている、と。けれど北斗は、こうも思っていたのです。
(その頃の俺の演奏、2人にも聞いてほしかったな)
「Wedding Night」 ストーリー15
夢を諦めたから今の自分があるのだと言いつつ、時折過去に思いを馳せる北斗。
Wedding Night を読んだとき、きっと北斗は、これからもそうして過去を抱えて生きていくのだと感じました。切なくはあるけれど、悲しいことではないし、ここが北斗にとってのひとつの終着点なのだろうと。
だから今回のイベント「Shining Night Serenade☆」でさらにその先ーー北斗が自身の過去を手放す瞬間が描かれたことがとても衝撃的でした。
今は、あの頃じゃなく今の俺の1番の演奏を、2人には聞いて欲しいかな
「Shining Night Serenade☆」 ストーリー8
前述したWedding Nightでの北斗は、決して後ろ向きではないけれど、前向きにもなりきれていないような感じで、もう戻らない過去を想う姿はどこか切なさを感じさせるものでした。それが今回のラストでは、「今の俺」の演奏を聞いてほしい、という考えに変化しています。北斗が過去を手放した瞬間でした。
この「過去を手放す」というのは、過去を忘れるとか、考えないようにするということではありません。痛みも、かなしみも、戻らない過去を想う自分さえも認めて、「今」を進んでいく*1。
長い月日を経て、北斗はようやく、本当の意味で「今」を歩み始めたのだと思います。
そして、そこに至ることができたのは、冬馬と翔太がいたからなんですよね。
俺史上、1番ピアノが上手い北斗は、今の北斗だぜ!
「Shining Night Serenade☆」 ストーリー4
伊集院北斗にとっての天ヶ瀬冬馬は、失った情熱を思い出させてくれる存在であり、まさに燦然と輝く光。その存在が、「俺史上1番!」ときっぱりと言い切ってくれること、北斗にとってはどれほど心強いでしょう。
これは後日エントリを分けて書こうと思うのですが、冬馬は、大事なことは言葉を選びながら(迷いながら)話すところがあり、今までこういった場面では台詞中に「…」という三点リーダが多用されていました。(このことについて、過去に書いたエントリはこちら)
ところが今回のイベントでは、北斗に掛ける言葉のすべてに「三点リーダがひとつもない」のです。
心の底から北斗のピアノが好きで、北斗が好きで、信じているのだなぁと涙がじわっとなった場面です。
翔太の言葉もいいんです。
北斗君のためなら、僕もなんでも協力しちゃうからねー。
「Shining Night Serenade☆」 ストーリー2
あの面倒くさがりな翔太が、「なんでも協力しちゃう」だなんて……!
信頼度MAX達成の台詞などで「守ってあげる(〜してあげる)」とか「頼っていいよ」という旨のことをプロデューサーに言ってくれるのをみると、この「相手に対して何かをする」ということが翔太にとっての最上級の愛情表現なのだと思います。
北斗が冬馬と翔太を頼ったことも非常に大きな変化だと思います。今までの北斗は、ふたりに弱い部分を見せたがらなかったから。
冬馬と翔太も本音で話せる相手ですが…
あの2人は大切な仲間であると同時にライバルですから。
弱みよりも、完璧でカッコいい俺を見せたいって気持ちが上回るんです。Side Memories 伊集院北斗 最終話「これからも隣で」
常に完璧な自分を、というのはいかにも北斗らしくて好きです。
でも、冬馬と翔太はきっと、完璧じゃなくてカッコわるい、弱い北斗のこともちゃんと好きだと思うから。寄りかかったって、いいんですよね。
ふたりがずっとずっとずーっと「北斗のピアノが好き」「北斗が好き」と伝え続けていたことが、彼の中で少しずつ自信になって、やがて過去と向き合う力に変わり、ふたりに弱さを見せることができたんじゃないかな。どんな自分も受け止めてくれるふたりがいるという、安心感。大丈夫、って思える場所があるのって、すごく強い。
共演したAltessimoの麗は、今回のライブ中、Jupiterについて次のように感じていました。
今日で間違いなく、伊集院さん…
いや、Jupiterというユニットは、
アイドルとしてまたひとつ、上のレベルにステップアップしたと感じる「Shining Night Serenade☆」 ストーリー7
315プロダクションの中でもキャリアが長く、もともとアイドルであったJupiterは、これ以上成長のしようがないのではと思うくらいに成熟していたため、「アイドルとしての成長」という部分がどのように描かれるのか、ずっと謎でした。でも、成長するんですね。そしてきっとこれからも、変わってゆく。思わずいろんな未来を想像しちゃいました。来年の今頃は、どんなユニットになっているんだろう。
さいごに。今回、長年描かれてきた「北斗とピアノ」についてのお話が一区切りついたことにより、より一層安定した北斗は、今後同じように大きな展開を迎えるであろう冬馬と翔太を今まで以上に支えられるようになるんだろうな〜と思っています。
次の掘り下げは……どっちだ!?
*1:わたしは結構くよくよ考え続けてしまうタイプなので、北斗はすごいなぁとしみじみ思います。