感想:Straylight.run( )

シャニマスのイベント「Straylight.run( )」の感想です。

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芹沢あさひ・黛冬優子・和泉愛依からなるアイドルユニット「ストレイライト」。それぞれ年齢も考え方も違う3人が出会い、ぶつかったりぶつからなかったりしながらひとつのユニットになっていくまでが描かれた「Straylight.run( )」。読んだのは随分前になるのですが、ずっと大好きなイベストです。

 

 

「わからない」けれど「わかる」

このイベストで印象的だったのが、「芹沢あさひはたくさん考えるひと」であるということ。あさひって、ひとたび興味を持ったら一心不乱!というようなエネルギー爆発型のハチャメチャさがありつつ、でも、ものすごーくいろんなことを「考えて」いる。

5話の終盤、あさひが愛依に対して、同じ部分の振り付けを何度も練習していたのは何故か?と訊く場面。振りが覚えられないからだという愛依の回答に、あさひはまたも疑問。あさひは難しい振り付けもすぐにこなせるので、「振り付けが覚えられない」ということが「わからない」。この疑問に対して愛依は、できない人もいるのだと回答。そこであさひは「そっか」と納得します。

そっか

愛依ちゃんは、あそこができなかったんすね

わかんないけど、わかるっす!

できないとこはできるようになるまでやるっすもん!

この「愛依ちゃんは、あそこができなかったんすね」という台詞がとても好きで……。自分が難なくできちゃうことを、できない人もいる。その状況に対して得意げになるのではなく、愛依ちゃんはあそこができなかったんだ、と受け止めるあさひはとても素直でまっすぐで、わたしがあさひを好きな理由のひとつです。

そして、あさひの疑問に明るく丁寧に答え続けた愛依ちゃんも、とてもやさしい。あさひがいじわるで聞いてるわけじゃないこと、きっとちゃんとわかってるんですよね……。んん〜、これだけでも、ストレイライトの結成は大正解だと言える気がする。

どうしてできないのかは「わからない」けど、愛依ができないこと、できるようになるまで練習していたことは「わかる」。

できないことはできるまでやるのと同じように、わからないことはわかる(≠納得する)まで考えるタイプなのかなと思いました。一見、突拍子もないような行動も、考えて考えて、たくさん考えたうえでのあさひなりの答えだったりする。「わかった」内容がちょっとずれてる時もある*1けれど、大なり小なり齟齬が生まれることは誰にでもあることで、それを埋めるのは、愛依がしたような丁寧な関わり方なのかなと思います。

あと、あさひはこれまでいろんなことを「独り」で考えてきたのだと思うのですが、これからは冬優子や愛依、プロデューサーがそばにいることになるので、より「たくさん考える」という部分が長所として輝いていくのではないかなあと、ちょっとわくわくしています。  

 

なみだが出るのは 

わたし、イベストを読むまでなんとなく、いずれ芹沢あさひのまっすぐさが黛冬優子を救うのだろうと思っていたところがあって。

でも、そんな単純なことじゃないんですよね。冬優子があさひに向かって「みんながあさひちゃんみたいに強いわけじゃない」と言う場面。あさひは冬優子の言葉を遮って、そんなわけないと反論します*2

そんなわけないっすよ!だって――

たくさん我慢できる人は強い人っす

この後、ふたりは長い沈黙。わたしはこの言葉がまるっと冬優子を救うのかなあと思ったのですが、冬優子は静かに、けれどはっきりとこう言います。

……ふゆは違うと思う

あさひにはあさひの考え方があるように、冬優子には冬優子(ふゆ)の考え方がある。信念と信念がぶつかりあうさまをみて、心が震えました。ぶつかる発端となった考え方の違いもどちらも間違ってなくて、奔放に見えるあさひから「たくさん我慢ができる人は強い人」という言葉が出てきた意味とか、冬優子がそれを否定した背景とか……すごくすごく考えさせられた。

でもって、ふたりの間で固まってしまった空気を変えるのが和泉愛依なんですよね~……!愛依は他人の良いところを見つけるのが本当に上手で、しかもそれをことばにして相手に伝えられるひと。愛依がいることで、ストレイライトの絶妙なバランスが保たれているのだと強く感じます。

さて、レッスン室でぶつかったあさひと冬優子ですが、その後もうひと事件起こります。アイドル対決イベントに出演したストレイライトの3人*3。本番前に流れた出来レースの噂は真実で、一番手の愛依は低得点。あさひはその理由を考えて、考えて考えて「対戦相手とまったく同じ振り付けで踊り、相手よりも良いパフォーマンスで踊れば高い点数が取れる」と思い至り、ステージ上でそれを実行してみせるのですが……なにせ出来レース、結果はあさひも低得点。納得できない様子でステージ裏に帰ってきたあさひに対して冬優子はついに、かわいいふゆ♡のモードを維持できないほど激しく怒り、声を震わせ、そして、涙を流すのです。 

なんで……冬優子ちゃんが泣くっすか?

どうして冬優子が泣くのか。

それはきっと、あさひがあんまりにも自由奔放で、冬優子の描くアイドルとしての未来予想図にないことばかりが起こり、その度に冬優子が頭を痛めているから……

ではないはずで。

いやそれも含まれているのかもしれないけれど、それだけではないはずで。

冬優子は自身のアイドル生命やユニットとしての今後の仕事への影響だけではなく、あさひが傷つけられることについても、心配していたのだと思うのです。実際、ステージであさひがダンス完コピパフォーマンスを見せている間、観客からはあさひに対する非難の声が少なからず上がっていました。「バカバカしい世界」で、愛されないアイドルがどうなるのか。冬優子が流した涙には、そういうあさひへの――ユニットメンバーへの想いが含まれていたと思います*4

 

センター、真ん中に立つひと

結局、出来レースを覆すことはできないままイベントは終わってしまい、日が落ちた海辺にて。あさひは「冬優子ちゃんの言うとおりだった」と言います。冬優子の言う、見てもらうため・愛されるための努力というものをイベントを経て「わかった」あさひ。どんなに良いパフォーマンスをしても、見てもらえなければ意味がない。だから冬優子が正しかった、と。

納得できないからって、違うってばっかり言っちゃったっす

ごめんなさい、冬優子ちゃん

えらい!!!!

ここで謝れるあさひよ〜〜!!えらい、えらいよ……!!でも、また独りで考えすぎてエラーが起きている気がする。冬優子が正しい、というわけではくて、冬優子「も」正しい、んじゃないかな。ストレイライトの推進力は、あさひの持つまっすぐさを源としていると思うから。それはおそらく冬優子も思っていることで、次のようにあさひに宣言します。

あんたがセンターっつったらセンターなの!

ふゆがそう言ってんだから決まってることなの、わかる?

わかんなくてもわかりなさいよね

 センターになりたかった冬優子と、よくわかんないからとどこか他人事だった愛依から「センター」として本当の意味で認められたあさひは、嬉しそうに笑ってセンターになることを承諾します。わからなくてもわかれと冬優子は言うけれど、きっとあさひは「わかった」し、冬優子があさひを認めていること、ちゃんと伝わっていると思います。

 

全6話(+オープニング、エンディング)で描かれたストレイライトとしての「はじまり」。とてもアツくてよかったです。

 

*1:第3話 SING IT!!でのプロデューサーからの注意をあさひは「わかった」と言うけれど、プロデューサーの言いたいこととは違う理解の仕方をしてる。

*2:第5話 FALSE

*3:第6話 LIBERTY

*4:このあたりは【スパイシーベリィデコレイト】のコミュを読んで確信に変わった感じがあります。