だって、「運命」だった。
モバエムのイベント、「WILD BOYS 〜激情の拳〜」の劇中劇(theater 315 の第1話から第10話までの内容)についての感想です。
とある街で、縄張り争いを繰り広げるふたつのチーム。そのうちのひとつ、「プラネッツ」を率いるのは、北斗が演じるホーク。もうひとつのチーム「ブラックス」を率いるのは、大吾が演じるD.G.。
第1話では、ホークが牢の中で冬馬が演じるトマーシュと出会う場面から始まります。
喧嘩をして捕まったホークの隣の牢には、当時「ブラックス」に所属していたトマーシュが捕らえられていました。ここ、読んだときにびっくりしました。トマーシュがブラックスの人間だったとは。(イベストでは明かされていなかった)
大人に見放された、唯一の居場所であったブラックスにももう戻れないと言うトマーシュに、ホークは「俺も同じだ」と共感をしめし、牢の壁越しに身の上話に花を咲かせるふたり。やがてふたりは「初めて会った気がしない」とお互いの存在に“特別”を見出すのですが……結末を知っているために身が千切れそうな思いでした。とくにホークの発言にはやられた。だってホーク、トマーシュとの出会いを「運命」と呼ぶんだもの!(しかも本人を前にして!)
WILD BOYS はJupiterが出演している劇中劇のなかでも特に好きな作品で、いままで幾度となくお話の全貌を想像してきたのですが、その想像をはるかに上回る、まさに「運命」的な出会いにしびれました……。第1話から衝撃づくしでそれはもうゼリーを飲まざるを得なかったです*1。
トマーシュとの出会いを「運命」と呼び、彼をチームに勧誘するホーク。行き場を失くしたトマーシュにとって、それらの言葉はとてつもない輝きを持った言葉だったんじゃないかなぁ。チームに誘われたあと、トマーシュが嬉しそうに言葉を詰まらせるのがなんとも微笑ましい(し、その後の展開を知っているのでつらい)。
ホークがプラネッツを去っていった後、プラネッツを守ることを決断するトマーシュの健気さには泣けてしまう。だって「プラネッツは俺たちの居場所」という「俺たち」には去ったホークも含まれているし、いつかホークが「戻ってくれる」かも、と言うんですよ……!*2戻ってくる、ではなく、戻ってくれる、という縋るような言い方がひどく切なかった。命を預けられるとまで思った相手だもんな……。
イベントストーリーで劇中劇のおおまかな内容を読んだ時に、「ホークは約束の夜、トマーシュに会えていたのか?」という点がすごく気になっていたのですが(だって会えていなかったら残酷すぎる*3)、会えていたことがわかってほんっとによかったです……*4。
今回お話の全貌が明らかになって一番胸が痛かったのは、翔太が演じるショウの言葉がひとつもホークに届かない場面。*5
ショウからトマーシュの死を告げられたホークは、トマーシュを失ったこと(=運命の喪失)で頭も心も一杯で、ショウの問いかけも、制止の言葉も届かない。
ショウはそもそも、元敵対チームのメンバーだったトマーシュがプラネッツに加入することを「気に入らない」と言っていたんですよね。でもホークが決めたことだから従った*6。トマーシュが加入して「ずいぶん経った」あとにようやく、ホークがトマーシュを気に入っていた理由がやっとわかったかもしれないと言うショウ*7。つまりショウは、トマーシュが加入してからも長い間彼のことが気に入らず、なぜホークがそんなにもトマーシュを気に入っているのか合点がいっていなかった、ということになります。しかしホークはトマーシュの元へと駆けて行ってしまうのです。自分(ショウ)の言葉が届かないまま。
ショウにもホークと過ごした時間や信頼関係があるはずなのに(そしてもちろんホークはショウのことを大切な仲間だと思っている)、トマーシュという「運命」がそれをいとも簡単に超えてきてしまう。
なんて、なんてこちらの感情めちゃめちゃにしてくる脚本なんだ!!最高!!!
そしてD.G.も、家族同然と思っているメンバー(トマーシュ)がある日突然「運命」にひかれて別チームに加入しているわけで……。D.G.はメンバーのことを家族同然と考えていて、そこにはトマーシュも含まれていたと思うのですが、おそらくトマーシュにはそれ(D.G.の気持ち)が伝わっていなかったのではないかと思います。だからD.G.はトマーシュの「運命」になれなかった。
特別を見つけたホークと、誰かの特別になりたかったトマーシュ、選ばれなかったショウとD.G、兄が特別だったリオン、選ばなかった(あるいは選ばないフリをしていた)キッド。
1話から10話までを読んで、なんとなく、そういうことだったのかなと思いました。
あと、ホークとトマーシュは似ているふたりだなとも。トマーシュやショウに危険が及ぶことを懸念してプラネッツを離れたホークも、「遠くへ逃げて生きて」と言葉を遺していったトマーシュも、どちらも相手に生きていてほしかったんですよね。そしてどちらも叶わなかった。
ラスト、牢の壁越しにショウとキッドが会話をする場面。劇中劇のはじまりとおわりが同じ「牢の壁越しの会話」なのがとてもとても美しい構成で、大好きです。
ところで 、WILD BOYS の劇中歌を収めたサウンドトラックCDが欲しい!