感想:【Anti-Gravity】芹沢あさひ

 

シャニマス P-SSR【Anti-Gravity】芹沢あさひのストーリーについての感想です。

 

物語は、とある舞台のオーディションを受けるためにダンス練習を重ねるあさひの姿からはじまります。オーディション用のダンス映像を、納得がいくまで何度も撮り直すあさひ。繰り返し踊るうちに集中力が極限まで高まって、滴り落ちる汗がスローモーションに見えるシーンは、あさひの並外れた才能が感じられて、うつくしさとおそろしさがありました。

今回踊ったのはコンテンポラリーなのかな。ダンスは詳しくないのですが、なんとなくこの動画の、もう少しゆったりしたイメージで想像しながら読みました。

youtu.be

床に寝そべって起き上がる動作が印象的なダンス。ダンサーは土屋太鳳。

このあたり、知識があったらもっと楽しめるんだろうな……!詳しくなりたい……!

 

オーディションの結果は不合格。

後日、不合格だった舞台稽古の見学に呼ばれたあさひは、オーディションに合格した子のダンスを見て、自分が選ばれなかった理由を理解します。

だから、わたし落ちたんっすね
あれは、うんと手足が長い人の方がかっこいいっす
あの人の方がよかったっす

【Anti-Gravity】芹沢あさひ こぼれ落ちる色

あさひが感じ取った「理由」は、プロデューサーがオーディション関係者から聞かされた理由と同じでした。
努力ではどうすることもできない部分。それが今回の合否を分けた。けれどあさひは、泣くこともなく、落ち込む素振りすらみせません。どうしようもないことだと割り切るように、「あの人の方がよかった」と言うのです。そのようすを見て、プロデューサーがあさひにかける言葉の選択肢は3つ。

・平気なわけ、ないよな
・あんなに、頑張ってたのにな
・あんな世界、見てしまったら

「あんなに、頑張ってたのにな」を選択すると、あさひはこう返します。

……? なんでプロデューサーさんがそんなこと言うっすか?
だめだったのはわたしっす。

【Anti-Gravity】芹沢あさひ こぼれ落ちる色

ここで、Straylight.run()の冬優子とあさひのやりとりを思い出しました。

なんで……冬優子ちゃんが泣くっすか?

「Straylight.run()」 第6話 LIBERTY

どうして冬優子が泣いたのか。どうしてプロデューサーが落ち込んでいるのか。それは、あさひのことを、想っているから。

あさひは泣かない。落ち込むそぶりもみせない。以前ひとりで立ったステージ*1を「寒い」と表現したところをみるに、悲しいとか、悔しいとかの感情を「体の感覚」として感じてはいるものの、まだ言葉がついてこない……のだと思います。

だから、彼らはあさひの分まで涙を流すんですよね。初期のストーリーとの重なりにグッときました。

 

オーディション用に撮影したダンスは、あさひのモノローグなどをみるに「完璧」でした。しかしあさひは「あれはわたしのじゃなかった」と振り返ります。

完璧だったけれど、わたしのダンスではなかった。そして選ばれたのは手足の長い――今回用意されたダンスが映える子だった。そのことに直面したあさひは、舞台のダンスを自分の身体に合わせて再構築し、プロデューサーに踊って見せます。
努力ではどうにもできないことがこの世界にはあって、けれどそれは、時に完成された舞台のためには必要なことでもあって。それでも諦めきれないとき、諦めたくないときはどう消化・アプローチしたらいいのか。

その問題に対してあさひは、自分のために踊るという答えを出しました。好奇心に突き動かされて踊るのではなく、悔しさをぶつけただけの独りよがりなダンスでもない。パフォーマンスの完成度を上げるために、「わたしの」ダンスにするために、あさひは踊ったのです。わずか14歳でこの答えに辿り着けてしまう、圧倒的なセンス。

もちろんプロデューサーとのやりとりがあったから辿り着けたのだとは思うけれど、それでもやっぱり、あさひはこれまで「完璧なコピーを得意とする」描写が多かったので、コピーするだけでなく、組み立て直したり再構築することもできる、ということが示されたのはすごく大きい気がします。

ずっと課題だったモチベーション維持の難しさ・不安定さについても、【Boiling Sky】*2で解決法を見出しているし、ほんとにこの先どうなっていくんだろう……。具体的には、次のストレイライトの新規イベントストーリーがこわい!このところストレイライトのイベントは冬優子・愛依に焦点が当たったお話だったので、そろそろあさひ回がくるのではないか、だとしたらあさひが何らかの課題に直面するようなストーリーだろうと思っていたんですよね。でも前述の【Boiling Sky】と今回の【Anti-Gravity】でおおよその課題は克服した感じがあるので、どうなるんだろう……?!と楽しみです。

 

あさひが稽古の見学であっさりとオーディション結果を受け入れたのは、悔しさをうまく表現できないからだけではなく、舞台全体を俯瞰した表現者としての判断もあるように感じて、この視点を持ったまま成長していったら、きっと今よりももっとすごい存在になるのだろうと思います。そこまで見えているんだ、と少しこわいくらいだった。

VS.でも思ったけれど、あさひはまるで高い壁のようで、遠い星のよう。その才能は多くの憧れや羨望を集めるけれど、彼女はそれに左右されない。 意識的にじゃなく、そもそもそこへの興味があまりない。他者に興味がないわけではなく、問いと答えが常に自分のなかにあるタイプ。孤高、ということばがよく似合う。

――誰にも見せなくても、踊りたかったっすけど

誰かが見てくれたら舞台になるっすね

【Anti-Gravity】芹沢あさひ 冬を裂く獣

早朝のレッスン室で、自分のために踊ったあさひの言葉。あさひがアイドルになる前、誰に見せるでもなくひとりぼっちで踊るあさひの姿を思い出して、あらためて、芹沢あさひがアイドルの世界に居場所を見つけたことに嬉しい気持ちになりました。【Anti-Gravity】、最高のシナリオでした。

 

ここからちょっとセヴン#スの話。

「完璧なコピーを得意とする」のは緋田美琴も同じなのだけれど、美琴は"練習量"で、あさひは"センス"でそれを実現していて(もちろんあさひも練習はたくさんしている)、美琴が10年の活動を経てセヴン#スでようやく「決められたパフォーマンスに自分の表現を加える」ことに至ったのに対して、あさひは短期間でそれをして見せた。美琴→あさひのホーム会話で、美琴があんなにも眩しげにあさひを見る理由はここだよね…と思ったり。

セヴン#スと【Anti-Gravity】で「パフォーマンスをするということはどういうことか」についての美琴とあさひのそれぞれのスタンスが見えてきて、とても面白かったです。

 

*1:ストレイライト ファン感謝祭 error code:017

*2:P-SSR【Boiling Sky】芹沢あさひ