感想:セヴン#ス

シャニマスのイベント「セヴン#ス」の感想です。

七草にちかと緋田美琴がようやくユニットとして動き出す「セヴン#ス」。

非常に良かったです。ここ最近のイベントは特にそうですが、ユニット曲がかかるタイミングが抜群に良くて、ひとつのドラマ作品を観ているようでした。お話としての美しさにうっとりします。

 

好き!ってなったところがたくさんあるのですが、まずは、序盤〜中盤で様々な人物が「八雲なみ」について語っていくところがすごく好きでした。
たくさんの人間によって語られる「八雲なみ」というアイドル。みんなが思い思いのものを彼女に見ていて、そしてその証言によって「八雲なみ」の肖像が少しずつ形作られていく。それはまさしく、偶像で。
こういう描写、たまんないんですよね……口承というか、語り継がれるものの話。人間の身勝手さみたいなものも感じられて、おそろしさもあって。
引退したアイドルの楽曲が、時を越えて海外で火がつき再び注目を集めるという導入もリアルで良かった。シャニマスはこういったリアルな手触りのあるお話づくりが本当に巧みだと思います。大好きです。

 

シャニP/ルカのマネージャー/はづきさん(アイドルの家族)の、「ステージに立つひとを見守るひと」のお話もすごく良かったです。三者三様の見守り方。
特にはづきさんが印象的でした。はづきさんの言葉は毎回胸に刺さる。
283プロ事務員以外にも複数の仕事を掛け持ちしていて、妹と2人暮らしをしている七草はづきという女性。
にちかが中学に入るまでは台所には立たせない(包丁や火などの危険から遠ざけるために)と決めていた、という言葉から、はづきさんがいかに姉として妹のにちかを守って生きてきたのかが伝わって、その後の「いいな〜……にちか」が胸にずっしりときました。

はづきさんはずっと、守ってきたんですよね。
妹と、妹との暮らしを。
それこそ、指もちょっとどころじゃないほどに切っただろうし、壁にも何度も当たったはずで、そんななかを、おそらく独りで生きてきて。
手を添えてくれるひとも、いないまま。(天井社長からの姉妹に対する何らかの支援はあっただろうとは思うけれど)
決して妹に暗い感情があるとかではなくて、ただただ、妹を見守ってくれるひとがいることへの安堵の気持ちと、見守ってもらえることの羨ましさが、あの「いいな〜」という一言に込められていた気がして、七草はづきという一人の人間の人生に思いを馳せました。友人として桑山千雪があの事務所にいることに、読み手としてとてもホッとします。

ルカのマネージャーのこともたくさん知ることができてよかったな……。ルカと共依存的な関係でありながら、終盤の、美琴の変化を語るシーンで、あぁこのひとは、美琴のこともずっと愛してきたひとなんだ、と感じました。元マネージャーだから当然といえば当然なのだけれど、ずっと見てたんだな、と。自分を犠牲にしながら担当アイドルを支え続ける彼女は、今後どうなっていくんだろう。

 

なんだか、シャニマスはほんとうに、「人生」を描くお話だなと思う。アイドルも、アイドルじゃない人も。
どうやって生きていくのか。
夢の中を、夢が終わったその先を。
答えは一つじゃないし、正解もない。
それでも選択をし続けて、生きていかなくてはならない。
そういうことを、とても丁寧に描いていると感じます。

 

そしてようやく始まった、七草にちかと緋田美琴の、「SHHis」の物語。

にちかが手をとって、美琴をビールケースという小さなステージに上げる場面。キービジュアルにもなっているけれど、これが本当に印象的で。にちかにとって美琴は最初から「アイドル」なんだけれど、美琴を「アイドル」にしたのは、今回八雲なみの資料を提供して愛を語ったにちかなんですよね。それがこのシーンに表れていると思いました。「アイドル」になるために、ふたりはユニットになったのかもしれない。そう思えるドラマチックなシーンでした。

少しずつ、でも確実にユニットとしてのかたちが形成されつつあって、少しずつ、少しずつ、ふたりの距離が縮んでいっている。

にちかの心を大きく占めていた「なみちゃん」への憧れが、美琴のパフォーマンスを前にして徐々ぼやけていくシーンは、呪縛がほどけていくようであり、けれど今ここで心の拠り所(ある種のアイデンティティ)がなくなっちゃうのは現状のにちかにとって結構危ないのでは、とも思った(だからシャニPも当初はトリビュートの話をにちかに持っていかなかったのだと思う)のですが、最後ふたりが手を取り合ったなら、大丈夫、なのかな……。

 

とはいえ、まだめでたしめでたしには程遠くて、問題は山積み。
そこで、ラストでなにやら勝負を仕掛けてきたらしきシャニP。このあたりの答えは5thライブで示されるのかな。(このイベスト(ラストのシャニPの選択肢)の後にIf I_wings.を持ってきてるのはかなり意図を感じるのですが、どうだろう……)
シャニPはことSHHisのプロデュースにおいてはなかなか思うようにいかず苦しんでいる場面が多いのですが、白コートの双肩に担うものが多すぎ&大きすぎるんですよね……。代表・天井努さえも空へ連れて行こうとしてる感じがする。倒れないでおくれよ、シャニP……!

 

余談ですが、「業界の偉い人に可愛がられてるシャニP」の描写、ぼんやりとイメージはあったけど、「マジ」なんだ……!!と慄きました。愛されキャラというか、懐に入るのが上手そう(本人は無意識)ですもんね。とても魅力的なひとなので、シャニPのS.T.E.P.もほしい〜……!